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競売不動産入門

競売不動産入門
 不動産を買うなら競売と不動産屋、どっちが有利?

競売によるメリット
・相場より安く購入できる場合が多い。
・取引相手が「国」のため安心である。
・売物件が殆ど出ない地域にも売り物が出る。

競売によるデメリット
 ・「競売妨害」をしている債務者の物件を落札してしまうと、処理に思いがけない時間と費用がかかる場合がある。(妨害のされ方はさまざまです。くれぐれも気を付けて下さい)

 ・建物の内部は見られないため、思わぬ「瑕疵(シロアリ、雨漏り等)」がある場合がある。

 ・裁判所の資料(3点セット)に間違いがあっても買った人の責任となる場合が多く、物件調査の責任は入札する人の自己責任。

 ・立ち退いた後のリフォームが必要となるが、物件内部を見られないため見積もりが難しい。

 ・最近は殆ど現金払い。(銀行によってはローンも使用できます)

 ・金融機関のローンは時間的な制約がある。また、事前に充分な打ち合わせが必要。

 ・落札した後でローンが駄目になっても振り込んだ保証金が返還されない。

 ・居住者との立退き交渉がスムーズにいかず、強制執行せざるを得ない場合がある。そのため思わぬ出費をする事もある。

 ・入札しても必ず購入できるとは限らない。よって事前調査が無駄となる場合が多い。

 良い物件は多くの人が入札しますので、必ず購入できるとは限りません。

 それでも時間的に余裕があり、相場より安く購入を考えてる方には競売の方が有利な場合が多いと思います。

 実際には通常売買の物件で、売主が買い替えなどの理由で売り急いでいるものを交渉して、値切って買うのが一番有利ではないでしょうか。

 何しろ、最近の競売不動産は競売バブルと言われるように、無理して高値で落札している個人業者が多くいます。特にアパート一棟などの収益物件は驚くほど高額での落札が続出しているのが現状です。くれぐれも落札させる事を目的として、高値で無理に落札しないように気を付けてほしいと思います。


 裁判所の資料は間違いがいっぱい
 裁判所には3点セット(物件明細書、現況調査報告書、評価書)があり、物件閲覧室で誰でも閲覧する事ができます。但し、もっともらしく記載されている裁判所の3点セットにも、間違いやミスが多くあります。このため、資料に記述された内容をうのみにして入札すると、思わぬケガをする場合があります。もちろん、それとは逆に思わぬをする場合もあります。
▲裁判所 ▲評価書
▲物件目録
▲物件明細書 ▲現況調査報告書
<例として> 
1.建築基準法の道路に接道しておらず、再建築ができないのにその指摘がなされていない。

2.事故物件(自殺、殺人など)にもかかわらず、その指摘がなされていない。

3.評価金額が実勢価格と大幅な差異がある。
(大半の物件は評価金額と実勢価格には大きな乖離があります)


 競売物件を買う時の注意点 
主に以下のような点に注意する必要があります。
 ・建物内部見られませんので、現在の居住者はどのような人が住んでいるのか? 出来れば事前に落札後の立退きについて話し合いをしておくのが良いと思います。

 ・中古物件の購入ですので、現状のまま購入という形になりますので、リフォームが必要です。リフォームに要する費用は、現地での外部観察及び内部の写真を見て、自分なりに概略見積もりしておきます。

 ・落札した後のキャンセルはできません。仮にキャンセルした場合は保証金は返還されません。

 ・居住者が出て行かない場合、立退きをさせるのに強制執行が必要となります。手続きの方法は裁判所の書記官が丁寧に教えてくれますので簡単ですが、強制執行するのにもそれなりの費用が必要となります。

 ・思いがけない瑕疵があった場合には、運が悪かったと諦める必要があります。(損金は大きいですけど)


 落札価格の目安
競売に参加してくるような人達。

 ・転売して差益を稼ごうとしている業者及び個人

 ・土地に仕入れを考えている建売業者

 ・自分のマイホームを手に入れたいと思っている個人

 ・アパートなどの収益物件を探している業者及び個人

以上ですが、大半は転売目的の業者です。
しかし最近は競売も身近で簡単になってきましたので、個人の参加が多く見られます。

転売目的の業者の入札価格

入札価格=転売価格-(利益+諸経費)

 ・諸経費とは――

   登記費用+不動産取得税+リフォーム費用+立退き費用+仲介手数料

 ・マンションの場合は、上記に管理費、修繕積立金の滞納及び転売までの金額を加えて算出します。

 ・入札価格の決め方で難しいのは、転売価格(いくらで売れるか)の目論見が人によりそれぞれ異なることです。同じ物件でも2.000万円で売れると思う人もいれば、1.800万円と思う人もいます。何しろ不動産は定価がないわけですから。

 ・また、利益幅も業者、タイミングにより千差万別です。ですから落札するのはなかなか難しいのです。

建売業者やマイホームを手に入れたいと思っている人は・・・

 ・落札の価格査定が転売業者とは異なります。建売業者は立地の良い物件(土地)であれば市場価格で落札していきます。建売業者の儲けは建物で儲けるものですから土地は相場で入手できれば良いと考えているのでしょう。

また、個人でマイホームを入手したい人の場合、自分の求めているロケーションの物件で相場で入手できれば、不動産業者に払う仲介手数料が不要な分だけ割安で入手する事になります。


 落札価格は以上を考えに入れて見当を付けてみるのが良いと思います。思わぬ高額で他人が落札してしまった場合は、次の物件で頑張って下さい。 


 任売物件を格安価格で入手
 「任意売却物件」とは、売主が任意(自分の意志)で売却する物件のことですので、通常の売却不動産は任意売却物件と言うことができます。

 しかしながら一般的に不動産業界で「任売物件」と言うと、不良債権化した不動産を債権者が債権放棄を伴って処分する物件の事を言います。

 この場合、当然ですが所有者本人の同意が必要であり、また早期に処分したいため売却価格は通常一般市場価格より安く設定されます。どの位安く入手出来るかは債権者との交渉次第となりますが、通常は1~2割位は安く入手する事が可能です。

 近頃、競売不動産の落札価格が高騰し、競売の旨味が無くなっているので「任売物件」を入手して転売している業者が増えています。

 任売を得意にしている不動産業者は色々なルートから「任売物件」の情報を入手しています。

 一般的なルートとしては――

  1.銀行、ノンバンクのルートから。
 2.管財人、自己破産の依頼を受けている弁護士ルート。

  3.相続対策のための税理士ルート。
  4.裁判所で公示されている配当要求から。
以上が主なものです。


 一般の方が「任売物件」で不動産を安く入手するには、上記 「1~3」のルートにコネを得るのはなかなか難しいと思います。

 どうしても「任売物件」で安く購入したいのなら、、誰でも出来る「4」の配当要求をうまく活用される事をお薦めします。

 配当要求の公示とは簡単に言うと、「この物件は競売の申立てがされているので、この物件を競売で売却した代金の中から配当を受け取る権利の有る人は申し出て下さい」という公示です。

 ですから、配当要求に掲載されている物件は4~6ヶ月後には競売になる予定のものです。
気に入った地域の物件が配当要求に出ていたら所有者と話し合って任売で売却する事を勧めます。

次に債権者と調整し、金額が折り合えばかなり安く不動産を入手する事が可能です。

 簡単に言うと以上の様な事ですが、実際にやってみるとなかなか大変です。不動産屋の苦労も少しは理解できるかも知れません。
 ご自身でやってみて、手に負えなければ御相談下さい。出来る限りお力になります。


 自宅が競売になりそうな方へ
 よく「自分の家が競売になってしまうんだけど、何とかなりませんか?」という相談を受けます。要するに買い戻したいという事です。

 結論を言うと――

1.債務者(所有者)は買い戻せません。

2.債務者の親族(例えば息子さん)の名義で買い物す事は出来ますので、息子さんが任売で買うだけの 現金を持っていれば全く問題ありません。

3.しかし息子さんが住宅ローンを組む必要が有る場合、年収が条件を満たしていても、同居している場合は一般の銀行では住宅ローンの融資をしてくれません。これは親の求済となり、住宅ローンの融資対象から外されてしまいます。同居しておらず、かなりの期間その家以外で生活していた場合には、住宅ローンの融資を受けられる事もあります。

4.親と息子さんが同居している場合、絶対に融資が無理なのかと言うと、金額的な条件は別にして、融資の相談に乗ってくれる銀行がない事もありません。

5.多分、最も有利な対処の仕方としては、無理して買い戻しを検討するよりも任売でなるべく高額で売却し、金融機関の債権放棄をお願いするのが最良ではないかと思います。


 競売雑感あれこれ
競売不動産を落札するのって本当に楽しいものです。
入札するとドキドキ、ワクワク。
開札の時は試験の発表を見に行く様な浮かれた気持ちになるのは私だけではない様です。
入札すると「取らぬ狸の皮算用」ではないですけど、この物件を・

  「この価格で落札できると――円儲かる」

 などと計算してしまいます。

最低売却価格に少し上積みして入札した時でも・・

  「この物件はたまたま入札者がほかに誰もいなくて自分が落札できるんじゃないか」

と思ってしまいます。でも現実はそんなに甘くないんですよね。

最近の落札価格ははっきり言って異常です。

私が落札して2,000万円で売却しようと思っている物件を、平気で2200~2300万円で落札していく人がいます。こういう人は必ずしも個人で、自分の所有物件が欲しくて入札しているわけではなく、ほとんどが転売目的の業者さんです。

一体いくらで売り出すつもりなのでしょうか・・・。

もう1年位前の事ですが、「私なら1,600万円位で転売する物件だな」と思った物件を、他の業者さんが1,650万円位で落札していました。この業者さんはリフォーム後、2,180万円で売り出していましたが、なかなか売れず、徐々に値を下げて今は1,800万円代で売 り出しています。
これではこの業者さん儲けは無いですよね。ちなみにこの業者さんが持っている物件は、かなり売れ残っているようです。

裁判所の物件閲覧室にいる人達は、本当にさまざまです。皆さん宝探しをしている様に楽しそうにしていますが、何がそんなに楽しいのでしょう?
先日、裁判所でタバコを吸いながら近くにいる人と雑談しました。その人いわく「私は今、失業中で、競売物件の転売をやっているんです。競売の転売と職探しの2足のわらじです」と言ってました。初めの2~3件はうまくいった様ですが、最近はなかなか落札できないので生活が楽じゃない、と嘆いていました。最近こういう人を多く見かける様になりました。他人の事は余り言えませんが、(競売にかかってしまった)人の不幸を飯の種にしないでほしいですよね。
私の友人で毎週2~3件入札している人がいます。この人は競売不動産のセミプロですが、元々お寿司屋さんを経営していた人です。お寿司屋さんもなかなか大変で、回転寿司が多くなって経営が思わしくなくなり、腰を痛めた事もあって店を売却して、競売物件の転売を本業とするようになりました。最近、競売不動産て本当に身近になったものだな、と思います。
知人のFさんは以前、千葉市内のをボロアパート2,400万円で落札しました。次順位とは500万円も差の付いた、ブッチギリのトップでの落札でした。昭和50年代の古い木造アパートで、外観はモルタルのヒビ割れがひどく、鉄製の階段は錆でボロボロ

内装はお世辞にも綺麗とはいえない物件でした。2DK8室で落札時の入居者は3室だけ。Fさん自身が落札後、室内のペンキを塗り、トイレのクリーニングなど自分でリフォームし、手に負えない部分だけを業者に依頼し、リフォームを完成させました。
税金、その他の費用を含めて総額3,000万円弱かかったそうです。
しかし入居の募集を開始したのが3月であった事も有り、1週間で全室入居者が決まったそうです。毎月の家賃収入は38万円位らしく、「こんなボロボロアパートなんで落札するの?」と思いましたが、年間の利回りは悪くないです。

 こんな旨いやり方する人いるんですね。

知人のDさんは競売物件の入札を繰り返して、既に50連敗以上しているそうです。何を思ったのか、最低落札価格120万円位の古いテラスハウス1室の物件を、126万円で入札しました。しかもこの物件、持分2/3のみの売却残り1/3の持分は先住者の母親が所有している物件です。落札したら母親の持分を安く買い取って、持分100%を所有し、賃貸に出して家賃6万円で貸し出すつもりだった様です。
開札結果は入札者1名で見事落札です。
落札後、立退きと持分1/3の買取の交渉をした所、先住者は「立退きには絶対に応じない。母親の持分1/3は絶対に売らない」と交渉は難行し、逆に先住者からDさんの落札した持分2/3を買戻したいと言われ、仕方なく170万円で売却したそうです。結局Dさんの儲けは30万円位だったそうですが、Dさん良かったですね。苦労したかいが有りました。